モンキーレンチとスパナ

様々なサイズのスパナ

自動車の接合部分には必ずと言って良いほど用いられているナットやボルトですが、これを操作するのに使われる工具はなんですかと問われれば大抵の人はモンキーレンチと答えるかスパナと答えるのではないでしょうか。 これは整備士だけのことではなく、普段は自動車の点検をしたことがなく車検も毎回ディーラーにお任せしているような、ユーザー車検とは全く縁のないライトな自動車ユーザーにも当てはまることなので、この工具はよほど一般人の間にも浸透しているのでしょう、そう思わずにはいられません。 ですが自動車整備の腕が未熟な人の中にはスパナとレンチの区別がつかない人もおり、間違えて覚えているせいで丁寧に解説してもらった作業がうまくいかなくてその原因を突き止めるまでに無駄な時間を過ごしてしまうこともあるようです。 ここはレンチでボルトを緩めましょう、といわれた箇所をスパナで解決しようとするのですから手こずるのも当然で、工具の名前を勘違いしていなければそんなミスは避けられる、いわゆるイージーミスの類でしょう。 元々レンチという名称はナットやボルトを回す工具全般を指すもので、一般的にレンチと呼ばれている工具は英国ではスパナと呼ばれているなどちょっと紛らわしい事情もあり、自分で自動車の整備やメンテをやろうと思い立ち工具を自費で購入した人でなければ意外と間違えたまま記憶している可能性もあります。 もしあなたの親しい人がそんな勘違いをしていたのならストレートに「それはスパナじゃなくてレンチだよ」と突っ込むのはやめてさしあげましょう。 過ちを指摘された相手に恥ずかしい思いをさせてしまい、ふたりの関係が気まずくなるかもしれないのでもう少しソフトに訂正してあげるのが大人の対応です。 例えば「そこに北北西の向きに置いてあるピカピカのスパナ取って」と言われたら「はい綺麗なレンチだね、新品?」と手渡すなど、さりげなくレンチであることを伝達する方法で相手に上手に伝えるのです。 そうすれば相手のプライドを傷つける心配もなく、ふたりの友情はさらに深まります。 これなしでは自動車整備を円滑に進めることができないにも関わらず意外と使用する頻度の低いレンチやスパナだからこそ、こうした思い違いが発生しやすいと思われますが何度も心の中で復唱しながら使用していくうちに覚えられるはずです。 日本ではどっちがレンチでどっちがスパナと呼ばれているか、自信のない人もいるかもしれないので分かりやすい覚え方を伝授しましょう。 先端が開いているオープンエンドの形状をしているほうがスパナで、クローズしているほうがレンチと呼ばれています。 メガネレンチという名称も耳に残っているでしょうから、メガネのように閉じているのがレンチだと頭脳にインプットするのがいいと思います。 どちらも整備するときの使用頻度はお世辞にも高いとはいえない部類に入りますが、それでもこれら無しで完璧な自動車整備およびメンテナンスをすることはまず不可能なほど重要な工具であると、職人なら知っているはずです。 どこの民間自動車整備工場でも、ディーラーに併設されている整備工場でも、車検専門のチェーン店のフランチャイズの整備工場でも、この工具を所有していない所はないと断言してもいいと思いたいほどどんな工場でも備えている工具です。 頻度は少なくてもこれでしか回せないボルトやナットが確実に存在するので、用意していなければ整備の途中で手詰まりになってしまいます。 他の工具で代用できれば無くてもいいのでしょうが、自動車にはあちこちにパイプが通っていたり出っ張りがあったりと自由に工具を操るスペースが確保できない位置でボルトを回さなければならない場面に遭遇します。 そんなピンチを救ってくれるかもしれないのがレンチとスパナなので、自宅のガレージで自動車整備をするのならとりあえず買い揃えておくべき工具でしょう。